このエンジンの”腰下”はこういうつくりです。
クランクからぶっといチェーンで一旦”セカンダリーシャフト”を駆動し、そこからミッションメインシャフトに至る”4軸構成”、見れば見るほど雑誌等で見るZ400FX以来のカワサキ空冷ミドルフォアのそれにそっくりです。この腰下の「基本設計」を受け継ぎ、水冷16バルブ化したのがGPZ400Rだったのですね(長いこと使ったなー。後には”ゼファー”にもなりますね)。そして海外向け兄貴分は550から600へスケールアップし、「600クラス」を創り出した元祖となったのです。
4軸とはいえナウいmotoGPエンジンとは違って正回転クランクなのですな。要はホンダCB-Fみたいなエンジンです。
バイク用直4ではクランクウェブの1枚がプライマリードライブギヤを兼ねる”3軸構成”が後には一般的になったと思います。一般的とはいえこれはちょっと「へえ!」と思うような面白い構造なのですが、カワサキは初代の「Z1」からして既にこれでした。Z恐るべし。しかしミドル系で一旦別の方向にも行ってみたのですね。
私は「Z」以降バイクの直4はだいたいその構造に落ち着いたのかと勝手に思っていたのですが、今回ざっと調べるとそうではなくて、落ち着く前に各社いろんな軸構成のエンジンを造っていたんだなあ、という事が分かりました。CB750fourとCB-Fとでも全然違うんですね! ではGPZ400Rに至るカワサキミドルはこの「エフ」をパクったのか?! いやいや、カワサキの方がエフより早くからこれやってたようですよ。「ザッパー」とか。
これはクランクシャフト中央からの出力取り出し、「センターテイクオフ」(カッチョイイ!)ですね。多分ですけどこの4軸構成はセンターテイクオフにしたいが為のものでしょう。サイドテイクオフよりクランク強度で有利だそうです。かの「NSR500」が’92年に、クランク負荷の高まるビッグバン化に合わせてセンターテイクオフに変更したのが昨日の事のように思い出されます・・・・90年代を「昨日」だと思っている。これは典型的なオッサンの症状です。
でもまあ単純に一本多いだけでも「重い」ですよね。ホントこのエンジン重いです。大体センターテイクオフ採用エンジンにはこの風評がついてくるような。むかーしのポルシェV12 F1エンジンも確かそんなこと言われてたような。フリクションロスも多いでしょう。こちらは強度稼いだ分クランクジャーナルを細軸化して少しは取り返せるでしょうが。
しかし今こういう凝ったエンジンを作らなくなった理由は「生産コスト」という面も大きいのでしょう。明らかに部品が多いし組立工程も複雑です。カネがかかるのは二の次に(それでもバイクがジャカスカ売れたので儲かった)ネガな事も顧みず良かれと思ったことは何でもやってみた、というこのイケイケなオーラは残念ながら今のバイクからは感じられないです。
これは言ってはいけない事だったかもしれません。「じゃお前がメーカーなら出来んのか?!」と言われれば出来ないでしょうから。しかしスカした企業理論など振りかざされても客としてはシラけてしまうのです。そこに夢がないので。