今回はちょっと箸休めに話題を変えて・・・あえて今までさらっと流してきたつもりの「アンチダイブ機構」について今さら蒸し返してみよう、というある意味炎上覚悟のお話です。
私がこれについて割と「肯定派」なことは薄々バレてるかもしれませんが、アンチダイブ機構の世間での風評についてはさすがの私でも知っています。「全否定」といった所でしょう。今のバイクには付いていない、後には廃れたアイテムなのだからダメダメなアイデアだったのだ、とみんなで決めつけています。80’sバイクのカスタムと言えばまずこれをキャンセルする、「見つけ次第抹殺」状態です。
私に言わせれば今のバイクが昔のバイクより無条件で全面的に優れている、という考えが「ホントにそうかなあ」と疑問で、だからこそGPZ400Rなぞ愛用しているのですが、それ以前にそもそも”アンチダイブ機構は今のバイクにはついていない”というのが間違いです。電子制御サスペンションを装備した最新高級バイクで、「ブレーキ入力を検知してフロント圧側減衰を強める」制御をしていないのは多分ないでしょう。こりゃアンチダイブ機構そのものやん。「アンチダイブダセぇダセぇ」と言い続けてきた我々世代とは一体何だったのか、という話です。気付けば”アンチダイブオワコン説”がオワコンの時代になっていました。
私もどんなバイクにも「付いてた方がいい」とか「付いてなきゃダメ!」とかまでは思っていないですが、少なくとも元々付いてるバイクは、これをただキャンセルしただけではノーマルより良くなるということはあり得ないのでは?とは思っています。当然ノーマルサスはすべてが”アンチダイブ機構ありき”でセッティングされているからです。
ではもしノーマルフォークをアンチダイブキャンセルするなら、どうセッティング変更すれば良くなるのか?というのを想像してみると・・・
GPZ400Rはフロントのロングホイールトラベルがストロングポイントだと思っているのですが、これだと時にはフロントが沈み込み過ぎて操安性が悪化します。このバイクだと前が低くなり過ぎると倒し込み、切り返しがひどく重ったるくなります。そこでロングホイールトラベルを維持しつつもその「過大な姿勢変化」を「アンチダイブ機構」で抑えた、というのがこのノーマルフォークのココロではないか、と思っています。もしアンチダイブ機構をキャンセルするなら「過大な姿勢変化」を他の方法で抑えなければなりません。
それは140mmあるホイールトラベルを、実質120mmとかになるようにセッティング変更する、という事になるでしょう。つまり120mmストローク時に、ノーマルの140mmストローク時と同等のばね反力となるようにスプリングを硬いレートに替える、あるいは油面を上げる、といった方法を取ることになります。
しかしこのGPZの”AVDSフォーク”はノーマルの2段レートスプリングと、例のデバイス「TCV」のスプリングがセットでチューニングされている物なので、実はこのノーマルスプリングは基本「変えられないもの」なのです(イニシャルもです)。なんも考えないでシングルレートなど突っ込むとストローク途中でばねレートが下がる「逆2段レート」になってしまう、という事は覚えておいて下さい。個人レベルでTCVスプリングも合わせてチューニング、となるとこれはかなりハードル高いですね。現実的な選択肢は「油面を上げる」だけかも、です。
それでもこのようなセッティング変更をし、あれこれ調整を繰り返すなら苦労の末にちゃんとまとまったバイクにすることは出来るだろうとは思います。でもどうでしょう? このモディファイは「今の製品と比べても明確な長所を持ったノーマルバイク」の長所を捨てて、「今の製品と比べたら平凡以下のバイク」にしてしまっているだけなようには思えませんか? 何もそこまでムキになってアンチダイブ全否定せんでも・・・と私には思えてならないです。
ちなみにFX400RというGPZの兄弟車があり、このフロントフォークはGPZ400R用からアンチダイブ機構を外したような構成の物です。言わばメーカー純正アンチダイブキャンセル仕様(ただしそのままGPZにポン付けはできませんぜ。念のため)な訳ですが、どんなセッティングになっているのか気になりますねぇ。上記のようなスプリング変更の他、例の「TCV」をアンチダイブ機構代わりにもっと効かせるようになっているのかもしれません。あくまで想像です。