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タイヤエア圧「温間管理」について考える ~その2~

前回サーキットにおける温間管理について書きました。今回は公道編です。

公道で温間管理を実行している、という人は実際どの様にやっているのでしょうか? 私は実はよく知らないのですが、例えばこんな感じでしょうか。

特定の峠道だけを走る、というバイクの使い方をする人が、いつもの峠をまず1往復してタイヤを温め、パーキングにバイクを止めて、エアゲージを取り出し「ターゲットの温間内圧」に調整してからいざ本番、と、こんな絵が浮かびます。

しかしこれ前回書いたサーキットでの温間管理とは結構かけ離れた行為ですよね。サーキットではタイヤをあっためてから内圧設定をしているわけではないですから。もう答えは出てしまったようなものですが、それでもこのような内圧管理をしたら何が問題かというと・・・

温間管理ではインラップをノロノロ走っただけでデータがパーと書きました。しかし公道はそんなケースの連続、というよりそんなケースしかない場所です。例えば遅い車に追いついて数十秒ゆっくり走ったらタイヤは冷めてしまう、ということになります。どんなに飛ばす人でも公道では基準として信頼するに足る、安定した「温間」になる事は無いのです。しかしこんな書き方をすると「ぢゃあ遅い車に追いついたら無理にでも速攻抜いて攻め続ければいいんだ」とか間違った捉え方をする人が居そうで怖いんですが、もちろん私はそんなことは言っていません。危険な運転は止めましょう。

そもそも公道タイヤで「ターゲットの温間内圧」を公表しているメーカーはありません。(そりゃそうです)それは自分で探すしかないですが、安定した温間であり続けない以上それも無理、もしそれを探り当てたとしても調整のため安定した温間にまでウォームアップするのが無理、もしその調整が出来たとしても“本番”で安定した温間で走り続けるのが無理、とすべてが無理、かつ無意味です。

昔ながらの冷間管理がなぜ冷間で測るのかと言うと、走ってあったまったタイヤはあったまり方もまちまちで、その内圧を測っても実質の結果がまちまちになってしまうからです。精度を高めるために導入された温間管理をなまじやったがために逆に精度を下げたのではこれぞ本末ハイサイドというものです。そんな事をするくらいならただ昔ながらの「冷間管理」をしてるだけの方がよほど正確だと思います。

そう言う私も温まったタイヤにエアゲージをあてる時があります。今履いているタイヤの適正内圧を探る時です。例えば冷間200kPaで走り始め、出先で測ると240kPaに上がっていたとします。これをその場で230kPaに落として走ったら良くなったとします。この場合、「温間230kPaが良いのだ!」ではなく、「冷間190kPaで走り出すのが良いのだ!」と考えます。240とか230とかいった絶対値は忘れて、10kPa落とした事だけを覚えておくのです。あくまでも「冷間管理」で考える、ということです。なぜなら温間230kPaと言ってもどの程度の「温間」なのかは分からず、数値に意味が無いし、再現性もゼロだからです。その場で落としたのは冷めるまで待ってられないからだけです。

どのみち走っている間に何十kPaも上下するものなので、市街地等も含めて走り始めから走り終わるまでの”平均”を良くしよう、という意識でいいんじゃないですか? 前編を読んでいただけたなら、完全ウォームアップ済の時を基準に内圧を合わせる、という考え方が実は全く”レーシー”でないことが分かるかと思います。峠の茶屋で一服して走り出せばそこはもう峠なのだから、公道では走り始めのパフォーマンスの方を重視する、というのがレーシーな考え方なのです。もうじき峠が終わる、という頃にようやくベストパフォーマンスになってもしょうがないでしょ?

さらに蛇足を加えるなら、私はこのような作業は”本番の峠”でやるのではなく、事前に近所の道で済ませます。もし内圧を下げて良くなったのなら、実際にはさらにもっと下げてみて悪くなるまで試さなければ一番いいところを探れないからです。出先では基本下げる方向の調整しかできないので、”本番”でこれをやると内圧低過ぎダメタイヤで休日の1日をラストまで走り切らなければならなくなるのです。エアポンプを持参すれば話は別ですが。