• 静岡県沼津市のバイク特注カスタムパーツ製作工場。GPZ400Rパーツ販売中。

フライス加工あれこれ

たまには私の普段の本業についてもお話してみたいと思います。 今回はフライス加工についてです。 世の中には専業のフライス職人さんもたくさんいらっしゃるので、私などがウンチク語ると怒られるかもしれませんが、私にとっても趣味ではなく本業の一部ですので何卒ご容赦ください。

文字通り「フライス盤」という機械で行う加工なのですが、これはバイク界でビレットパーツとか削り出し部品とか呼ばれるパーツを作る機械です。 業務案内で触れましたが、弊社のフライス盤は「汎用フライス盤」で、コンピュータ制御で動く「NCフライス盤」ではないです。 NCフライスは超高価な機械で、私に買えるはずもなく、また業務で購入額をペイできる見込みもゼロなので買わないのですが、私的には汎用フライスでも作りたいモノは作れてる、という理由も大きいのです。

削り出し部品、「挽き物」と呼んだりしますが(”鋳物”の対語かな? )贅沢な部品製作方法で、量産車にはまず使われない、スペシャルな魅力がありますね。 カスタム好きの方も皆さん大好きなんじゃないかと思います。 弊社ではこの挽き物の魅力があふれる製品になるよう心掛けて製作に挑んでいます!

製作物
弊社製作のレースパーツの一例。

実はフライス盤というのは「直線と円弧だけで構成された立体図形」しか作れない機械なのです。 それをいかに魅力的に見せるか、が設計者としてのウデの見せ所かと考えております。 さながら五・七・五、の字数の縛りの中で芸術性を競う俳句の世界のように・・・。 例えば円弧を斜めに切り断った面に、突如として作れないはずの「楕円円弧」が現れたりして、そういうのがカッコいいんですよねえ。 数学的な魅力があります。 もっともNCフライスなら楕円円弧だろうがナンチャラ曲線だろうが自由自在だろうし、等高線状に三次曲面をつくることも出来ちゃうんですが、その様な意匠が必要もないのに施された挽き物はなんかちょっとダサく見えてしまいます。 (※個人の感想デス。 )

うちで作った挽き物を見て、「よくこんなの作れるねぇ(こんな機械で)」とお褒めに預かる事もたまにあるのですが、作れるのは道理で、作る私自身が設計図を描いているからです。 自社の機械で、自分が作れるようにしか絵を描いていないのです。 しかしこの「設計者・私」という人物は性格の悪い男で、「職工・私」に決して楽をさせようとはしてくれません。 「作れるもんなら作ってみろ!」と言わんばかりの絵を描いてきます。 職工・私はいつも必死こいてこれを削り出すのです。

作るのがあまりにも手間なので、マトモな経営者なら図面だけ描いて加工は外注に出すでしょう。 しかし外注さんにお願いする手はずを整えるのがこれはこれで結構な手間です。 何より物づくりの一番面白い所を人に取られたくない、という気持ちになってしまうのです。

作業は集中力を要します。 図面をもとに作戦を立てて、数値を間違えることなく実行します。 間違えたら製品はオシャカです。 それを何工程も経てやっと完成します。 とても精神力を消耗します。 一つの製品を削り上げた時、自分が真っ白な灰のように白黒画像になったような気分になります。

燃え尽きた

この様な大変な手間を掛けた製品だという事をお客様にも知っていただきたくて、私が汎用機で挽いた削り出し部品の自社商品に、特別にブランド名を与える事にしました。 「汎用本造り オーパーツ」と申します。 どうぞよろしくお願い致します。