商品開発車両として我が工房へやって来たカワサキGPZ400R、87年型(D3)です。
このバイクのデビューは1985年で、当時はすごく売れました。その後、後継機GPXが出た後も併売されて、89年位まで生産されていたロングセラーです。
さて、カッコいいバイクですね。レーサーレプリカ全盛期になぜこれが売れたのか? とはよく言われますが、かっこよかったからとしか言いようがない気がします。今の目で見ても色あせない個性があります。900Rよりこっちのデザインの方が好き♡という人もいるんじゃないですか。”ヨンヒャク”が激熱の時代のバイクです。時代の雰囲気まで感じ取れます。この頃の400はどのメーカーのも大型車に全く遜色のない、いかにもコストダウンに走った感じがない立派なつくりでした。当時の国内市場では大型車よりむしろ250、400が販売の中心だったはずなので、各社ともこのような激アツな中型車でしのぎを削っていたのです。その中で2年連続400cc販売トップを記録したのがこのGPZ400Rなのです。
具体的にどこがウケたのか考えると、まずこの異形ヘッドライトじゃないですか? これ以前にもレンズ面が斜めったようなのもあったのでしょうが、こんなデザイン性の高いのは初めて見ました。若い人にはピンと来ないと思いますが、それまではバイクのライトはほとんど規格物の丸か四角しかなかったのです。このカウル面とツライチの曲面のレンズはすごいインパクトがありました。速攻で他社も追従します。このバイクの登場は「バイクの顔革命」だったのです。
次に「130サイズの極太リヤタイヤ」、ですか?(キョトンとしないで)いや、当時は「太ってぇー!かっきー!」ってほんとに思いました。今見ると全くそう思えないのが自分でも不思議です。実際ライバル車より太かったんですが、16インチと小径ホイールなので目の錯覚でより太く見えた、というのはあると思います。
乗ってみると、これが望外に面白いバイクです。とっても気に入ってしまいました。正直、乗ったらがっかりするのかと思ってたのです。昔のバイクだから出来が悪い、という先入観は間違いでした。私は公道でフルバンクひざ擦りなど怖くて出来ない人なのですが、そこまでせずとも充足感がある、という感じです。考えてみれば公道とサーキットとは同じ舗装路でも全然違う使用条件なので、公道で乗るならレーサーそのもののようなバイクよりGPZのような”公道向け”のバイクの方が楽しめる、というのは当たり前っちゃあ当たり前の話かもしれません。きっと当時のカワサキもそういう主張を持っていたんじゃないでしょうか。
こんなGPZ400Rをネタにパーツ作りを通してお客さんに楽しみ方を提案していきたいと思います。よろしくお願いいたします!