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タイヤエア圧「温間管理」について考える ~その1~

表題の温間管理ですが、最近ではレースのみならず公道で乗る人も取り入れている方がいるのだそうです。かなり高度なことをやっているなぁ、と思いますが、これについて私なりの考察を今回は書いてみようと思います。

昔ながらのやり方としては、タイヤのエア圧は走り始める前の「冷間時」に測る、という事になっています。バイクの取説にはそう書いてあるし、教習所でもそう習うはずです。これが「冷間管理」です。その冷間時のエア圧とは、走ってタイヤが温まって、中の空気が膨張した時に丁度良い内圧になるように、と見越して設定されたエア圧であります。「だったら実際に走っている時の内圧を直接測った方が、そんなまどろっこしい推測法より正確じゃんか」ということで始まったのが「温間管理」だと考えればいいと思います。レースやってる人でもここからして間違ってる人がいます。「温間管理」「温間内圧」とは決して走る前にタイヤウォーマーであっためたタイヤの内圧を測ることではありません。

では実際のレースシーンでどの様に温間管理が行われているかというと、サーキットを走っている最中のクルマにエアゲージをあてることはもちろん出来ないので、急いでピットインし、ピットインするやいなやエア圧担当メカニックがクルマに取り付き、急いでエアゲージを刺して内圧を測る、というやり方をします。この”急いで”というのがポイントです。ぼやぼやしているとみるみるタイヤが冷めて内圧が下がってしまい、正確なデータにならないからです。したがって温間管理をするときは、ドライバーやライダーには「ピットレーン以外常時全開走行」することが求められます。それこそピットレーンの速度制限区間の直前でフルブレーキングする位の勢いでぶっ飛ばします。インラップ(ピットインする周)でスロー走行なんてしようもんならピットでエンジニアに殴られます。

この様に想像以上に厳格に条件を揃えてデータを集めるのですが、決勝レース中にピットインしてエア圧調整などするはずもなく、結局いかほどの冷間内圧でスタートすればいいのか?ということをこのデータをもとに探っているだけでもあるのです。実は最終的には「冷間管理」だったりするのです。ただ、こうした生データを積み重ねる事で、〇〇サーキットで気温××℃、路面温度△△℃で、コースイン□□周目のパフォーマンスを重視するならこれ位、といった風にただの冷間管理よりその日その時により精密に合わせ込めるようになる、ということです。

ところで4輪レースで温間管理が始まったのは、レーシングカーならではの特殊事情があっての事でもあります。それはレーシングカーが床面で大きなダウンフォースを得ている為、タイヤの内圧変化でタイヤの半径が変わると床面の地上高が変わり、ダウンフォースが激変してしまうから、という事情です。だからこの様な面倒な内圧管理をやっているのだし、空気の代わりに窒素を入れたりもするのです。2輪はここまで厳格にやる必要がホントはないように個人的には思います。温間管理の導入が遅れたからといって2輪レースは遅れてる、という訳でもないのです。

エアゲージ
4輪レーシングチームが使っているエアゲージは写真のようなものではありません。1kPa、0.01kg/㎠単位を表示するデジタル式のを使います。