さてGPZ400Rには’89モデル、ZX400-D4というのがあります。これはGPZ400Rの最終型にして初のビッグマイナーチェンジモデル、となります。エンジン、車体共いろいろと変わっています。という事でD3型以前のオーナーとしてはその変更内容がやっぱり気になる訳です。
その変更内容については、手元にあるサービスマニュアルに補足として解説されていてだいたい把握できるのですが、よく調べるとその信憑性がちょっと怪しいところがあり、(例えば”シリンダ”が変更されている、と書いてあるけど部品番号が一緒だったり)まあ、あまり鵜吞みには出来ないらしい文なのですが、エンジンについて言えばつまりこれはZX400-F、すなわちGPX400Rと一緒にした、ということらしいです。
GPX400Rは’87年に出たGPZ400Rの後継機です。車体周りは完全に一新した新型車ですが、エンジンはGPZの物をベースに中身を改良したものを積んでます。これがなぜかGPZとは逆に鳴かず飛ばずの大不人気車となってしまった、というのは有名な話であります。(きっといいバイクだっただろうに・・・と不人気車に必ず入る注釈。)
時系列的に見るとZX400-D4が出たのは’89年ですからGPX400Rの2年後です。’89年と言えばGPXの後継機ZX-4のそのまた後継機のZXR400が出た年になります。主力車種がレーサー色を強めたバイクになったので、サブとして公道色が強い従来型を併売しようとしたけど、GPXの人気がこのありさまで、急遽旧いGPZ400Rにテコ入れをして出した、という事情が垣間見えます・・・しかし何ですな、おじさん達はNSR250Rがまさかの毎年フルモデルチェンジをかまして売りまくった事を強烈に覚えているのですが、カワサキの400も似た様な事をやっていたんですねえ。すごい時代だ・・・
さて、’89 D4のエンジンです。これはピストンが”F3キット”のそれによく似たサイドスカートが無い物になっていたり、おそらく燃焼室やポート形状に手が入っているだろうと考えられるシリンダーヘッドや、クランクやコンロッドも変わっていたり、かなりソソられるものなことは確かです。あと、点火システムがマイコン制御(死語!)のデジタル式に変わったのに伴いピックアップコイル/ローターが別部品に置き換わっています。私はてっきりこの点火システムもGPXと同じなのだと勘違いしていたのですが、ここはGPXとD4で違います。GPXの物はD3以前のGPZの点火システムに近い物のようで、ピックアップコイル/ローターの形状もD3以前のそれに似ています(ただし同じ部品ではない)。
したがってD4やGPXのエンジンをD3以前のGPZ400Rに載せようとする時は、この点火システムの違いを良く調べてケアする必要があるでしょう。D3以前のコイル/ローターに付け替えて、D3以前の点火システムで回すのは簡単そうに思えるのですが、ここがエンジン換装の最大のネックになるのでは? と私は睨んでいます。
なぜならばノーマルの「点火時期」の数値がけっこう違うからです。マニュアルのサービスデータを書くと、
となっています。私はエンジンチューナーではないのでこの数値の差が大きいのか大した事ないのか分からないですが、素人考えではけっこう差があるように感じます。D3以前の進角カーブは新しいエンジンにはマッチしない可能性があるのです。私も使っているウオタニSPⅡには進角を調整する機能がありますが、これは調整しても1700rpm以下の点火時期は変わらないようになっているので、1200rpmを10°に持って来ることは出来ないのです。
それでもこの”新エンジン”はやっぱり魅力がありますね。点火時期のハードルをなんとか工夫してクリアして、これを載せるのも面白そうなチャレンジです。しかし「最終型」という殺し文句がインパクトあって人気のD4エンジン、ヤフオクで中々落とせないんだよな、これが。