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GPZ400Rのショックユニット その2 ~フロントフォーク~

AVDSがなんとなく腹落ちしたところでフロントフォーク全体を考察してみたいです。このAVDSフォークはD3までの装備で、D4で新型に刷新されます。

古臭くて細くて何やら化石かゴミかのように思われがちなフォークです。しかし内容は当時のフラッグシップ、ニンジャことGPZ900Rと全く同等な物です。今の中型車ではあり得ないようなコストが掛かった高級なものが奢られていた、とは言えると思います。

AVDSフォーク
高級ショックユニットです!!

特に例のデバイス、トラベルコントロールバルブ(TCV)が良さそうに思えます。位置依存機能はともかく、(この仕掛けも巧妙で面白いです)圧側減衰バルブが明らかにただのオリフィス(穴)より上等なものです。私には捨てるにゃ惜しい高級フォークに見えてきました。

アンチダイブはどうか? これも忌みもののように嫌われていますが、はたしてどうでしょうか。ちなみに若い方は知らないかもしれないので説明すると、アンチダイブメカとはフロントブレーキを握った時だけフロントフォークの圧側減衰を極端に強めてノーズダイブを緩和する装置の事です。(アンチダイブメカには他の方式もありましたが割愛)

このフォークのストローク(フロントホイールトラベル)は140mmもあります。レーサーズ誌のインタビューにシャケさんが答えて言った「スズキに移籍した当初RG500のフロントホイールトラベルが140mmもあって、姿勢変化が大きすぎるので、すぐ直させた」、の数値そのものです。現代の目で見ればオンロードスポーツ車としてはかなり長い部類です。

一方で、長大なホイールトラベルは悪路の路面追従性では確実に良い仕事をします。オフ車の姿をした大型ツーリングバイクが巷で人気ですが、「公道ではアシの長い方が具合がいい」ということに一般ユーザーさんも気付いているのでしょう。実際の公道の舗装状態ってかなり悪いですから。私のイメージでは「オフロードとサーキットの中間」位な感じです。

なのでこのGPZのように、荒れた公道の路面を考慮して長いホイールトラベルを与えつつ、過大な姿勢変化はデバイス(アンチダイブメカ)で抑える、という考えのサス設定があっても良いのでは? と私は思うのです。ホイールトラベルをレーサー同等に詰めて姿勢変化を抑えればアンチダイブメカなどいらんのでしょうが、それでは荒れた路面ではだいぶ性能低いですよ、ようござんすか? という事です。

乗ってみても姿勢変化の大きさは特に気になりません。ハッキリとは体感できませんが、このバイクにおいてはアンチダイブは意外といい働きをしているような気がします。実はデフォルトでは結構強くブレーキレバーを握らないとアンチダイブは効かないようになってます。あまりでしゃばらないセッティングになっているのです。フォークの動きは安っぽい感じはせず、大きな不満はありません。TCVの効果でしょうか? 「あれ、今、思ったよりピッチングしなかったぞ」という違和感はちょっと感じる時はあります。

予備知識の刷り込みで評価にバイアスがかかってる、と言われてしまえばその通りでしょう。しかしこれもアリかもしれません。我々は趣味でバイクに乗る者であり、評価のプロではないのですから。メカニズムを知り、当時のエンジニアの“プロジェクトX”に思いを馳せつつその機械を味わう。古いバイクにはこういう楽しみ方もあるはずです!