今回は「伸側減衰アジャスター」について。結構皆さんもご存じかもしれませんが、通常これは「伸側」とは名ばかりの、伸側も圧側も減衰力が変わる言わば「減衰力アジャスター」です。(例外アリ!)YSSのリヤショックも旧版の取説には「圧側にも影響します」と明記されているのでこの“通常タイプ”です。
「例外」とはホントに伸側しか変わらない正真正銘の伸側アジャスターのタイプで、「伸圧完全独立調整」などと謳われています。ナイトロン等はこれです。オーリンズTTXの類のショックも構造上これになります。あと、フロントフォークカートリッジで右フォークに伸側アジャスターが、左フォークに圧側が、というやつも構造上伸圧完全独立になります。最近ではノーマル車にこういうのが付いてるのが多くなったので、もはや「例外」とは言いにくくなってきました。
ではなぜ通常タイプは圧側も変わってしまうのでしょうか。いかにも「伸圧完全独立調整」に比べて劣ったもののようなイメージがあり、メーカーも世間のイメージを自覚してかあまり大きな声では言いません。しかし恐らくチェックバルブひとつ設ければホントの“伸側アジャスター”になるのに、あえてそうしてないのには訳があるはずです。
つまりこの方が都合がいいことが多い、という事ではないでしょうか。実際には伸側減衰を強めたい、という場面では圧側も相応に強めた方がいい、というケースがほとんどだ、というわけです。確かにそうだとすると“通常タイプ”のほうが調整簡便で、ひどくバランスを崩すような間違いが少なく済むはずです。言い方を変えれば伸、圧の減衰力の比率はショックメーカーが丁度いいバランスにあらかじめ設定してあるので、そのバランスのまま減衰力が上下するアジャスターを付けました! この方が調整が簡単です! と。さらに高度にそのバランスを独自に変えたい時には、圧側だけ効くアジャスターも用意してあります! と、そういう事なのではないでしょうか。
伸も圧も両方変わる「減衰力アジャスター」と言えば、GPZ400Rのノーマルリヤショックに付いているアレと一緒です。実際これをいじるのは簡単で、なんも難しくないです。それがなぜか「伸側アジャスター」「圧側アジャスター」とか言われ出すと急に難しく感じて気おくれしてしまうのが自分でも不思議です。それが実はGPZのアジャスターとおんなじもんがショックの下側に付いてるだけなんだ! と気付いただけで私は一気に気が楽になりました。
前回書いたスプリングが勝手にぶわんぶわんと伸び縮みを繰り返す、という現象は、減衰力が足りないバイクに乗ると実際にハッキリと体感することが出来ます。その状態からぶわんぶわんが収まるまで「通称・伸側」をカチカチ強めれば、それでダンパーセッティングは大筋で完了。基本それだけなんじゃないっスか? と思っています。(“通常タイプ”の場合)
※今回のまとめ※
「伸側減衰アジャスター」は、実はただの「減衰力アジャスター」。※例外アリ!!※
「伸圧完全独立調整」は、ちょっと難しい「玄人向け」。